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箱男

安部公房 著

究極の引きこもり

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。
一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 
贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。
輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。
読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。

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◇感想と解説

小さい頃、冷蔵庫かなんかの大きな段ボールをもらって、窓をつけたり内部に棚をつけたりして遊んでいた。私はリビングにその箱を置き、しばらくその中で暮らしていた。
『箱男』 に出てくる箱はまさにそれと同じ。物語の冒頭でどうやって箱を作るのか細かく書いてあるが、そこを読んでもうニヤニヤが止まらず。わかる…わかるよ、それは箱に暮らしたことがある者にはわかる快適な箱の作り方なのだ。

小さな箱の中に住む。それは遊びでもなんでも、誰もが一度はやってみることではないか。特に子供のころはテントだとか犬小屋だとか、小さいお家に憧れがある。…のは私だけじゃないよねww

子供のころにやってるならいいけども、大人になってまでずっと箱をかぶっていたら単なる変人だ。この物語の主人公はそういう変態なのだ。

ド変態。

人に見られることは嫌がり、でも箱の小さい窓から世界を盗み見ている男。
彼はいかにひと目につかず、ゴミに紛れ込んで街の景観に溶け込むかに執着する。とにかく目立ちたくない。
ヤドカリみたいなやつだ。

世間との接触を極端に嫌がりながら、でも世間のことは気になる。この矛盾した状態がやがてひずみを生み、安部公房ワールドへと箱男は引きずり込まれていく…。
それはアリ地獄のように、もがけばもがくほどおかしなところへ落ち込んでいく底なしの砂穴…。

◇情報

1973.日本

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