ダーク・ハーフ
スティーヴン・キング 著
リチャード・バックマン の死因は「偽名癌」 という奇病
売れない純文学作家サド・ボーモントには、世間に知られていないもう一つの顔があった。血なまぐさい犯罪小説を書く、ジョージ・スタークなるベストセラー作家の顔が。本来の自分の仕事に専念したくなったサドはある日、すべてを公表し、ペンネームを葬り去ることにする。それがどんな悪夢の幕開けになるかも知らずに…。
Category:スティーヴン・キング/映画・ドラマの原作
◇感想と解説
スティーヴン・キング が、ペーパーバック作家の リチャード・バックマン を葬り去った後に書かれた作品。もうすっかり有名な話だが、リチャード・バックマン とはキングの別名である。バックマンの本が世に出るようになってから、この無名作家の正体は実はキングなのでは? と度々指摘があった。だって、キングみたいな文章を書く人ってそういないもん…。それで、キング本人は否定していたにもかかわらず正体がバレちゃったのだ。この本は、そのエピソードがアイディアの元となっている。
架空の町 ≪キャッスルロック≫ を舞台とした一連の作品群の1つでもある。
だからリアルすぎて怖い。
別名ってゆうと、なんだか特別な感じもするが、インターネット上やオンラインゲーム上で別の名前を持っている人も多い昨今。<別名>はもはや特別なものでもなくなった。別名を名乗るとき、まるで違う人格みたいな気持になる人も少なくないだろう。
そんなわけで、この小説を発売当初に読んだ人よりも、現代人の方がより強く恐怖を感じるんではなかろうか。人間なら誰しも、場所によって自分の立場が変わり、それなりの役割も演じなくてはならない。朝は父親で、昼は会社員、夕方にベーシストになり、夜は夫、ネット上では女、って人もいるかもしれない。
生きていればめまぐるしく立場はかわる。
それらの人格に明らかな差が出てきたらどうだろう。
どれも自分だと言い切れるだろうか。
▼ネタバレを開く
この物語で象徴的に使われる スズメ だが、どうしてもヒッチコックの『鳥』を思い浮かべてしまう。
ヒッチコックの映画で鳥たちは恐怖の象徴として出てくるが、キングの鳥たちはどこか神様の使いのような、そんな不思議な存在として描かれている。
そして、わたしにはこの鳥たちの正体がわからない。スズメである意味はもしかしたら特にないのかもしれないけど、何か元ネタ的な神話とかそういうのってないのかな??
いろいろ探したけど未だ見つからず。日本には神様の使いとして信仰されていた時代もあるようだけど…。
◇関連作品
スティーヴン・キング 著
≪キャッスルロック≫ を舞台とする物語。『ダーク・ハーフ』にも登場するアラン・パングボーン保安官が主人公のお話。『ダーク・ハーフ』 より後のお話。
平穏な田舎町キャッスルロックに骨董屋が開店した。店主は素性の知れぬよそ者、でも客はみな目を見張る。欲しくてたまらなかった品々が格安で手に入るのだ。条件はひとつ、店主に頼まれた「いたずら」を実行すれば…。キング作品でおなじみの町に、またも怪異が襲い来る。かつてないスケールと破壊力をそなえた大破局が。
スティーヴン・キング 著
『ダーク・ハーフ』に登場するアラン・パングボーン保安官が本中編集収録の 『サン・ドッグ』 にちらっと出てくる。これによって『ダーク・ハーフ』 と 『ニードフル・シングス』 が繋がる。
あの図書館には何かがいる。不気味な貼り紙、冷酷な司書、期日に本を返さないと現れる図書館警察。幼い頃の恐怖が甦り、サムの心を侵す。戦え、心の闇を消し去るのだ―恐怖に対決する勇気を謳い、感動を呼ぶ表題作。さらに異界を写すカメラがもたらす破滅を描く「サン・ドッグ」。
スティーヴン・キング 著
『ダーク・ハーフ』 の主人公 サドの自宅がある町 ≪ラドロウ≫ が舞台の物語。
都会の競争社会を嫌ってメイン州の美しく小さな町に越してきた、若い夫婦と二人の子どもの一家。だが、家の前の道路は大型トラックがわがもの顔に走り抜け、輪禍にあう犬や猫のために〈ペットの共同墓地〉があった。しかも、その奥の山中にはおぞましくも…。「あまりの恐ろしさに発表が見あわせられた」とも言われた話題作。
◇情報
1989.USA/The Dark Half