Review

『グリーン・マイル』 はトム・ハンクス主演の映画がヒットし、日本でも　「感動のファンタジックドラマ！」 と紹介されて話題になったので知ってる人も多いだろう。

感動のファンタジックドラマ。。。

確かにこの物語は 「死刑」 という難しいテーマに挑んだ奥の深い ヒューマンドラマ だ。キングらしい ファンタジック な驚愕・感動にも満ちあふれている。

だけどもだけど、、、、実は、本書の最大の特徴は、全く別次元のところにあったりする。この本、ただの感動長編ではないだ。まさに……

怪物!!!!!!!!

『グリーン・マイル』 の本を見たことがある人は知っているかと思うけど、この本はとっても変わっている。

6冊のうすペラッペラの本!!!!

1冊はだいたい200ページくらいで、数時間あれば読めてしまう。これが、毎月1冊ずつ。6ヶ月かけて発行されたのだ。
この変わった発表方法は、「作品の一部」 というキングの意思を受けて、世界中の言葉に翻訳された際にもそのとおり実施された。もちろん日本でも。
※後に上下巻の文庫も発売された。

って、文章で書くと、へぇ～って感じかもしれないけど、これが実際にどういうことか、お分かりだろうか。。。

キングの本は、常習性のある麻薬みたいな代物だ。彼の物語に没頭してる間は、ページを次々とめくりたいという激しい欲求に駆られ、食事はおろか、トイレに行くのさえはばかられる感じになってしまう。それが、数時間でお預けになって、次が読めるまで1ヶ月待たないといけないとなったらどうだろう。稀代の語り部と称されるキング。ちょうどいいところで本が区切れてるなんて思ってはいけない。

毎回「え!!?? ここで終わり!!???」でお預けになるのだ。

何度最後のページをめくっても・・・
─── 有無を言わさず To bo continued…

え!!!!????

えーーーー!!!!!

という状態で1ヶ月待たされる。1ヶ月間、モンモンとして過ごす。そして、やっと出た第2巻!!! ウキウキして手に取る!!

……

またもや驚愕。

だって、前回と関係なさそうな話題がはじまってる!!!! 時系列もめちゃくちゃで、時代があっちこっちに飛ぶし…. きー!!! あの話はどうなるのよ!!!!!

でもすっかり新しい方の話に持ってかれる。

そしてあっとゆうまに2巻の最後のページ。…..またすごいところで終わってる。。。。。

orz また1ヶ月待つの…??

最後までこれの繰り返し。なすすべもなく、揺さぶられ、振り回される読者たち。半年間も。。

『グリーンマイル』の映画はトム・ハンクス主演で『ショーシャンクの空に』のフランク・ダラボン監督が撮った。とっても素敵な映画なんだけど、このちょっとずつ見せられお預けになる感覚を映画で表現するのは難しい。
TVドラマならできるかな。ドラマにすると面白いかも。

この本は、底なしに湧いて出る好奇心におぼれ、子供のころに感じていたワクワクドキドキを、何度でも再体験できる素晴らしい本である。実際、私はこの本を何度も再読している。読めば読むほどまた面白くなるし、何度でも泣ける。

こんな贅沢な本、そうそうない。

ちなみに、本作品でキングはアメリカ文学史上初の偉業を成し遂げた。最終巻が発売された週は、その最終巻が1位となり、同時に他の全巻もチャートインしていたのだ。

「ひとりの作家がリストで六席占めたのも、ひとつの作品がリストで六席占めたのも、史上初 （パブリッシャーズ・ウィークリー）」

数字だけで本の善し悪しはもちろん判断できないが、どれだけみんながこの物語に夢中になったかはわかるだろう。飛び乗ったらもう、あとは終わりまで行くしかないのだ。