終りし道の標べに
安部公房 著
命は助かったが抜けられない牢獄
幻の処女作。
ここに新しいリアリティーがあった。異民族の中で培った確固とした他者。埴谷雄高は何かの予感を禁じ得ず雑誌「個性」に持ち込んだ。青年公房の生身の思索は17年後書き換えられ、もはや読むことはできなくなった処女作。
読者の期待に応え甦った処女長篇小説真善美出版。
Category:安部公房
◇感想と解説
ぼんやりとしているのに、はっきりと映像が浮かんでくる文章。
この本を読んでいると、視界のせまい夢を見ているような、もどかしい気持ちになる。
曇りガラスをいくら拭いても視界がクリアにならないように、もわーっとしているのだ。
水槽のなかにいるように音のこもった夢。薄目で世界を見ているような自由に動けない感じ。
そこから、もがいても、もがいても抜け出せない。
私たちは主人公がノートに綴ることだけを頼りに全貌を知ろうとする。
なぜ彼はここで囚われているのか。
ここには誰がいるのか。何が起きているのか。
読めば読むほど好奇心と想像力が刺激されて、次々と頭の中に映像が生まれる。
とても楽しい世界とは言い難いのに、この人がどうなるのか、気になって気になってしかたなく。
◇情報
1948.日本
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