恐怖の四季(スタンド・バイ・ミー 他)
スティーヴン・キング 著
名作映画の原作揃い 超贅沢な中編集
<ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編>
トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い…。
不気味な2人の交遊を描く「ゴールデンボーイ」。
30年かかってついに脱獄に成功した男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。
キング中毒の方、及びその志願者たちに贈る、推薦の1冊。
<スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編>
行方不明だった少年の事故死体が、森の奥にあるとの情報を掴んだ4人の少年たちは、「死体探し」の旅に出た。その苦難と恐怖に満ちた2日間を通して、誰もが経験する少年期の特異な友情、それへの訣別の姿を感動的に描く表題作は、成人して作家になった仲間の一人が書くという形をとった著者の半自伝的な作品である。
他に、英国の奇譚クラブの雰囲気をよく写した1編を収録。
Category:スティーヴン・キング/映画・ドラマの原作/Netflixで見た作品
◇感想と解説
文庫では <春夏> と、<秋冬> で、2冊にわかれているけど、『恐怖の四季』 は4編の小説が収録された中編集である。
ここではまとめて紹介する。
それぞれ春夏秋冬をテーマにしたお話で、お互いが微妙に関連しあってオムニバス的なひとつの作品となっている。
収録されている4編のうち3編が映画化されており、特に 『スタンド・バイ・ミー』 と 『刑務所のリタ・ヘイワース』 (ショーシャンクの空に) はキングの名を超えて世界中で愛される名画となっている。
どれも長編を書き上げた余力で書き上げたものとのことだが、なんとも贅沢な中編集だ。
◇『刑務所のリタ・ヘイワース』― 春は希望の泉 ―
映画 『ショーシャンクの空に』 の原作。
有名な話なので最初に書いてしまうが、これは脱獄の物語である。刑務所の調達屋で情報通の囚人レッドが、ある伝説の男について回想することで物語は進む。
伝説の男、その名は アンディー・デュフレーン。
映画 『ショーシャンクの空に』 は、世界中で絶賛され、キングという枠を超えて支持される名画となった。映画では、アンディとレッドを中心にした囚人たちの人間模様にスポットを当て、美しい感動の物語に仕上がっている。映画をまだ見てない人はぜひ観てほしい!
原作の 『刑務所のリタ・ヘイワース』 は映画とは違ったところにスポットが当たっている。キングがこの物語を使って一番に書きたかったこと…。
それは刑務所の <日常> だ。
キングは、レッドという仮面をつけてアンディー伝説を語りつつ、実は、刑務所という特殊な環境下での人生を書きたかったのだと思う。数年服役するような話ではなくて、人生の半分以上を刑務所で過ごす人の話を。
溢れかえるローカルルールと裏技の数々。刑務所の中でタバコを調達するにはどういうことをすればいいのか、看守と仲良くなるにはどうしたらよいのか。何が卑怯で、何が英雄的行動とされるのか。
そして刑務所の中には、本物の極悪人からコソ泥までいろいろなタイプの人間がいる。社会からつまみ出された人間の集団でも、人が集まればそこには一種のコミュニティが形成される。囚人たちの社会。外界とは勝手が違うけれどそこにも立派な人間関係がある。
これは膨大な取材なくしては書けない内容だ。決して長編の余力のみで仕上げたおまけ中編ではない。とっても面白いドキュメンタリーを読んでいるようだ。
そうして最後にやってくる感動。何十年もレッドたちと一緒に過ごした後に迎えるこの結末は、涙なしでは読むことができない。映画を見て感動した人は、ぜひ原作も読んでほしい。
ショーシャンク刑務所名前は、キングの他の作品にも度々出てくる。
キング作品に出てくる登場人物たちは、時に 「刑務所」 の代名詞として 「ショーシャンク」 と口にするほど、それはもう、出てくる箇所があまりに多くて把握ができないくらい。
◇『ゴールデンボーイ』― 転落の夏 ―
『刑務所のリタ・ヘイワース』 を読み、すがすがしい感動に包まれた後、読者は破滅の物語 『ゴールデンボーイ』 を読まされる。
だけどがんばって読んでほしい。なぜなら続けて読んだ人にしかわからない仕掛けがあるからだ。
『刑務所のリタ・ヘイワース』と同じ著者が書いたとは思えないほど、その世界観は変貌する。
『ゴールデンボーイ』 は、人間の中に潜む複雑怪奇な光と闇を、限りなく単純な設定で見事に表した傑作である。
主な登場人物は、裕福で優等生の少年トッドと、隠れて暮らすナチ戦犯のドゥーサンダーの二人だけ。それぞれ表の顔では普通の市民としてアメリカに暮らしているがその心の闇は奥深い。
少年の中の光と闇。
老人の中の闇と光。
少年と老人。
この入り組んだ3重のコントラストが織り成す泥沼劇。それが 『ゴールデンボーイ』 という作品だ。正直言って後味が嫌~な感じなので、落ち込んでいる時には読まない方がいいかも。
◇『スタンド・バイ・ミー』― 秋の目覚め ―
原題は 『THE BODY』。<死体> である。
言わずと知れたキングの代表作。キングを知らなくても、映画 『スタンド・バイ・ミー』 を人生の中で大切な1本として挙げている人も少なくない。
私も、キングを知る前に映画 『スタンド・バイ・ミー』 と出会っていて、生まれて初めて触れたキング作品がこれである。
おそらく、『スタンド・バイ・ミー』 こそが、キング作品中で最も有名な作品かと思われる。そんなわけで、ここでわざわざこの物語の内容を説明するのはやめにした。
一つだけ、特記しておきたいのは、この物語が ≪キャッスルロック≫ を舞台にしているということである。
『スタンド・バイ・ミー』 は、あまりに有名で、単独で扱われれることが多いが、本当はそれではもったいない。
少年らが辿って行った線路が極悪ピエロが君臨する 『IT』 の舞台 ≪デリー≫ と繋がっているように、この物語は、キングの奥深い壮大な世界とつながっているのだ。
映画ファンもぜひ、これらの裏のつながりを探る旅に出てほしい!!!
◇『マンハッタンの奇譚クラブ』-冬の物語-
『恐怖の四季』 で唯一映画化されていないお話である。
不思議なクラブに行って、不思議なお話を聞くという内容。
どんな不思議な話か概要を説明すると、そのままネタばらしになってしまうので、まあとにかくまずは読んでみて、としか言えない。。。
▼ネタバレを開く
『恐怖の四季』 はそれぞれのお話が微妙に繋がっている。
『刑務所のリタ・ヘイワース』 のアンディ・デュフレーンは、『ゴールデンボーイ』 の元ナチ戦犯 クルト・ドゥサンダーの株取引の担当をしている。
アンディ・デュフレーンの妻とその愛人を殺害した真犯人は、『スタンド・バイ・ミー』 のクリス・チェンパーズ (映画で リヴァー・フェニックス が演じた) を刺殺した犯人でもある。
『スタンド・バイ・ミー』 で4人組を追いかけた不良リーダー エース・メリルは、強盗をして後にショーシャンクに服役する。
※『サン・ドッグ』 (『図書館警察―Four Past Midnight〈2〉』 収録)の中で言及される。
『マンハッタンの奇譚クラブ』 だけ繋がりが見いだせないけど、このクラブは短編 『握手しない男』 (『スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員』 収録)にも出てくる。
◇情報
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