TOP

LIVE REPORT

> [東京] 縄文アートフェス 野焼きまつり@町田 ひなた村

[東京] 縄文アートフェス 野焼きまつり@町田 ひなた村

町田市の青少年施設ひなた村で行われた『縄文アートフェス 野焼きまつり』に参加した。

縄文土器野焼きの第一人者 猪風来さんによる縄文土器&土面を作るワークショップと、そこで作った作品を焼く「野焼き」のおまつり。

 

2015年2月15日

野焼きに先だって、この日は野焼きをする野炉の準備と、焼く作品の制作ワークショップが行われた。
私たちGENZもお手伝い。

猪風来さんの指導の元、野炉の大きさと位置を決める。

決めた円に沿って溝を掘る。

GENZのギターアツシと一緒に穴を掘っているのは、去年末のモザイク展示「情熱のモザイズム」でかわいいカエルのモザイクを作った陶芸家の青木英侃さん。
十年以上のお付き合いのある大好きな大先輩。お家が近所で駆けつけてくれた。
なんと私たちの縄文先生 石埜穂高さんと古くからお知り合いだったのだ。

この現場で一緒にいるのがとっても不思議!!!!!
人の繋がりって不思議だな―!!!

話を戻して…

たくさんの若者たちもお手伝いに来てくれて、どんどん野炉ができてきた。
美しい犬 クララちゃんも応援に来たよ!

溝が掘れたら、次は薪を運ぶ。

こんなに燃すのか!!!! 驚くほどの量の薪が運ばれてきた。

薪にはキノコが生えてて、わたしはそちらに夢中に…。

 

お昼過ぎになり、いよいよ縄文土器作りのワークショップが始まった。
先生は猪風来さんと、息子であり同じく縄文土器作家の村上原野くん。

縄文土器作りはとっても人気で満員御礼!
子供からご年配の方まで幅広い人たちが集まった。

みんなものすごい集中力で作品を作り始めた!!!
私も作った!!!

手前のが私の作ったやつ。
粘土も縄文人たちが使っていた状態に近いもので、ざらざらしてて形を作るのが難しかった。
私の知っている陶芸の粘土とは全然違う。でも私はこの粘土が好きだった。

やってみてよくわかったけど、この土で形を作るのには高度な技術が必要だ。
猪風来さんをはじめとする土器作家のみなさんの作品がいかにすごいかを身を持って実感した。

そして、縄文人、やっぱりすごい!!!!!

みんなが作った作品がずらりと並ぶと、すばらしく縄文な眺め。
これを焼くんだ!!! すごそう!!!

みんなが自由に作った作品は、お手伝いに来てくれた美術を学ぶ大学生のみなさんが丁寧に補強してくれて、その様子を見てるだけでとても勉強になった。

 

2015年2月28日

いよいよ野焼き当日。すばらしい天気に恵まれた。
会場に到着すると、野焼きが既に始まっていた。

 

猪風来さんと原野くんによるお祈りの時間。

みんなが掘った円形の溝は水はけの役割もするけど、結界の意味も持っている。
野炉は結界で守られた神聖な領域なのだ。

自然をコントロールしようなんて思ってはいけない、コントロールなんてできないんだ、大地や風や炎にお伺いして、その力を借りて我々は土器を作る、と猪風来さんが言っていた。

土器の温度を触ってたしかめているのは陶芸家の大藪龍二郎さん。
土器はいきなり火に入れると割れてしまうのでジリジリと温度をあげていく。

↑この写真の中央あたりにある炎の形をした土器が大藪龍二郎さんの土器。

 

見学の人たちも集まって来たところで、アイヌのお祈りカムイノミが行われた。
猪風来さんと原野くん、アイヌの芸術家 結城幸司さん、アイヌ刺繍の島田あけみさん、黒曜石のスペシャリスト 平田篤史さん、タイマッサージ師の泉かよさん、そして駆けつけてくれたラビラビの3人も参加して、炎へ祈りが奉げられた。

すごいオーラを放つ人たちが一堂に会して行われたカムイノミ。
こんな場に居合わせられるなんてめったにない!!!

というか、これを東京町田の公園のど真ん中でやちゃってるのもすごい!!!!

実際、このあたりは縄文遺跡がたくさんあるんだ。
縄文人たちも彼らのやり方で、土器を焼いてくれる炎に祈りをささげていたに違いない。

きっとすばらしい作品ができるだろう~!!

野焼きが順調に始まったろこでワークショップもはじまった。

 

こちらは 平田篤史さんが持ってきてくれた各地の黒曜石。

黒曜石は溶岩が急激に冷えて固まったガラス質の石。
地域によって成分が異なっていて、色や質感もいろいろある。

縄文人たちは特に質の良い黒曜石が手に入ると、それを惜しげもなくみんなと分け合う性質を持っていた。
そうして人の手から手へと渡された良質の黒曜石は広い範囲に散らばっている。
長野で取れる黒曜石が、青森で出土したりしているのだ。

 

平田さんのワークショップでは黒曜石を使って石器作りが行われた。

 

その隣では黒曜石のアクセサリーを作るワークショップ。
今回私はこのワークショップをお手伝いした。

 

結城幸司さんのアイヌ柄の切り絵講座。

別々のところで知り合ったタイマッサージ師のかよさんと、一筆書きアーティストのゴクブトくんが並んでチョキチョキしてた。
無心になれる作業。

 

島田あけみさんのアイヌ刺繍講座。

 

火起こし世界チャンピオンで古代技術&民族楽器研究者の関根秀樹さんによるワークショップ。
竹を使った楽器。ものすごくいい音させてた!

 

火起こし。
遊びにきてくれたフェルト作家のともみちゃんも挑戦してたよ!

どのブースも大人気で常に満員だった。
縄文時代から脈々と続くものづくり。今でも人間は作ることが大好きなんだね!!!

大人も子供も夢中になって作っていた。

 

さて、ワークショップをやっている間に、土器たちは炎の真ん中に集められていた。
見逃してしまったけど、これ、並べるの相当熱い!!!

 

これから一番の炎を上げるぞ!! ということで太鼓の演奏が始まった。
和光大学の学生さんたちの和太鼓。

ドロドロドロドロドロ!! 太鼓の音と共に大きな薪がくべられて、炎が上がって来た。

火柱があがる。熱い~!!!!
離れていてもすごい熱さ。野焼きは命がけなのである!!!!

そして炎がゆっくりと静まっていくところ、私たちGENZの出番に。
この日は、野焼きのタイミングを見ながら演奏の順番を決めたりして、自然の流れにあわせて動いてる感じが私にはとても新鮮だった。
なんだか生き物と向かい合っているようで。

jomonismのりょう君が撮ってくれた野焼きごしのGENZ

青木さんが撮ってくれたGENZ

さっきアイヌ切り絵を作ってたゴクブトくんが撮ってくれた写真。
彼は土器作りにも参加してて、彼の作った土器もここで焼かれいてる最中。

縄文のおまつりということで、GENZは品川ジャンベポッセのリーダーなかむらPAPAこういちさんと一緒にライブをやった。
GENZのパーカッションのJINくんとPAPAさんは長年一緒にセッションしてきた仲で、2人が太鼓をたたき始めるとすばらしいグルーヴが生まれる。

野焼きで土器を作ってる目の前で歌えるという、とっても貴重な体験ができて感無量だった。
私は、よい土器たちが焼き上がるように願いながら歌った。

野炉の中で土器たちが熱にゆらいでいるのが見えた。
それはまるでこれから産まれてこようとしている子供たちのように見えた。

縄文人たちは、円形のものの中で火を炊くことによって生命の誕生をイメージした儀式を行っていたそうだが、野炉から伝わってくる熱を浴びながら歌っていると、それがよーくわかった。
なるほどそういうことか!!!! 土器や土偶は炎の中から産まれてくるんだ!!!

GENZのライブが終わったころには、野炉の炎も下火になって、いよいよみんなが作った作品が焼き上がって来た。

焼き上がった土器たちを取り出すため、まだ熱々の大地を踏んで、野焼き男子たちが野炉の中に入って行く。
この光景を見てて、私は仏教や神道の護摩行、火渡りを思い出した。

炎を見て神聖な気持ちになるのはおそらく人類共通の概念なのではないだろうか。

 

炎から産まれ出た作品たち。

個性豊かな土器や土面が完成した。
真ん中の平たいお皿は陶芸家 青木英侃さんの作品。

 

縄文野焼きは、すばらしい体験だった。
炎の中から作品が産まれてくる様子が特に印象的で、自分がいま、東京町田の公園の中にいることをしばしば忘れた。
町田にも多くの縄文遺跡がある。遺跡と言っても、縄文遺跡の場合は、脈々とその土地に人が住んでいた形跡の一つであって、失われた文明ではない。

私たちも縄文人たちの末裔であり、かれらの独特な宇宙観を受け継いでいる。
現代の私たちの身近にある八百万の神々の存在は、縄文スピリットと矛盾しない。

日本神話のイヴ“イザナミ”は火の神“カグツチ”を産んで陰部を火傷し黄泉の国へ行った。
野焼きの光景を見ていて、私はこの神話を思い出していた。

縄文人たちは生と死の神秘に畏敬の念を抱き、ひたすら炎や子宮を模した土器、妊婦を模した土偶を作り続けた。
彼らの遺跡からはたくさんの土器や土偶、生活に便利な道具などが出土しているけど、人殺しのための戦う武器が未だ出てきていない。
つまり、彼らは戦争を必要としてなかったようだ。しかも一万年という長い間。

彼らは一万年、木の実を拾い、山や海で獲物を取り、土器や土偶を作って祈りを続けてきた。

一万の平和な時代がこの島にはあったのだ。

何が人を戦争に駆り立てるのか。
それは奪われたくない守るべきものがあるからではないだろうか。

大切な土地、大切な家族、大切な財産、大切な国。それを守ろうとすると争いが起こる。
戦う者たちはいつでも正義と正当性を主張する。

縄文人たちの精神は、そういった“執着”から程遠いところにあったのかもしれない。
彼らが関心を持っていたものは、生と死。

自由奔放に作っているような土器の模様にも、地域や時代によって決まりがあり、全く同じモチーフを作り続けていたりしている。
これは私の勝手な解釈だが、彼らは強迫観念にも似た形式を守ることで、宇宙の秩序に沿って生きることを目指していたのではないだろうか???

縄文野焼きに参加してそんなことを考えた。

 

すばらしい企画に参加できてとっても楽しかった。
jomonismのみなまありがとうございました!
なかむらPAPA、JINくんありがとう!またぜひみんなで一緒にやりましょう☆

ワークショップが大人気すぎてなかなかみなさんとゆっくりお話できなかったのが心残り。
またみんなで縄文話しましょう~!

 

最後におまけ。

近くの水場にいた立派な鯉。大きな鯉がいると“主”と言ったりするでしょう。
こういうところにも神様を感じてしまうのが、縄文から受け継がれているアニミズムの精神。

 

私の作った土面と勾玉と土偶も立派に焼けて帰って来た。
味のあるものに仕上がった。

出来がったものを見て思ったけど、これが一万年存在し続けるのってすごいなーー。
土に埋めておけば、これも残るかな???

なんて~。


■ 2015/2/28(土)
東京町田・縄文アートフェス ひなた村野焼きまつり
http://jomonismevent.tumblr.com/post/109964585552

約1万年間つづいた縄文時代の土器や土偶、装飾品をはじめ、数多くの住居跡や太古の祭祀場であるストーンサークルまでもがそろう、知られざる縄文王国「町田市」。そのほぼ中央に位置する青少年施設「ひなた村」で、春の足音が聞こえる2月28日に縄文文化を体感できる「まつり」を開催します。会場では朝から火を焚き、土器を焼く「野焼き」がとり行なわれるほか、縄文シンポジウムや町田の縄文遺跡を巡るツアー、縄文ワークショップなども同時開催。日本列島のルーツを見て、聞いて、ふれて感じる縄文づくしの一日です。

2015年2月28日(土)9:00〜17:00
会場:町田市 青少年施設ひなた村
東京都町田市本町田2863

主催:東京町田・縄文アートフェス実行委員会
(町田市観光コンベンション協会/NPO法人jomonism)

企画制作:NPO法人jomonism

日本列島のルーツにふれる濃密な縄文体験。
子どもから大人まで楽しめます!

————-
[縄文野焼き]9:00~15:00
●野焼き指導:猪風来(現代縄文アーティスト)
●火起こし:関根秀樹(古代技術&民族楽器研究者)
●縄文野焼きカムイノミ:猪風来、結城幸司(アイヌアートプロジェクト代表)、平田篤史(造形作家)

————-
[縄文シンポジウム]14:00~16:30
基調講演「縄文文化の真価~人類史の中で」小林達雄(國學院大学名誉教授)
町田の縄文解説「町田市の縄文文化」川口正幸(町田市教育委員会)
アーティストトーク1.「私の創作活動と縄文」大藪龍二郎(陶芸家)
アーティストトーク2.「jomonismの活動とビジョン」小林武人(NPO法人jomonism代表)

————-
[縄文ワークショップ]11:00~17:00
●縄文ワークショップ 講師:関根秀樹(古代技術&民族楽器研究者)
●黒曜石の石器作り 講師:平田篤史 (造形作家)
●黒曜石のアクセサリー作り 講師:NPO法人jomonism
●玉コロガシ◎プロジェクトワークショップ 講師:simizzy(造形作家)
●和光大学有志による太鼓ワークショップ
●アイヌワークショップ 講師:結城幸司、島田あけみ

[参加方法]当日、会場にて随時受付。 実施状況により人数 制限があります。

————-
[町田の縄文遺跡を巡るツアー]9:30~13:00


Writing : Chiyo

▲TOP