回想のビュイック8
スティーヴン・キング 著
とにかくよくわからない
少年は父を亡くした。
ペンシルヴェニア州の田舎町で堅実に警官を務めていた父を、突然の悲劇で。悲しみに打ちひしがれた少年に笑顔が戻ったかに見えたその日、父の元同僚たちは信じがたい話を語り始める。
署の外には決して洩らせぬ秘密、倉庫に眠る謎の車ビュイック8(エイト)の存在と、息子の知らぬ父の意外な過去を…。
練達の語り部キングが冒頭から引きずり込む、絶妙の開幕。
Category:スティーヴン・キング
◇感想と解説
奇怪な本である。
『回想のビュイック8』 の内容って、せいぜい短編が書ける程度ではないだろうか。。アイディアだけの世界ってゆうか。
それを長編にしてしまって、しかも割りとぐいぐい読ませてしまうのがなんかもう神業的なのだが、だけど読み終わって、いったいなんだったのか…と頭を抱えてしまうような、そういう小説である。
この物語を書いている時期を前後して、スティーヴン・キングはかの交通事故にあい、生死の淵をさまよった。確認するのがめんどくさいので、ホントかウソかは知らないけど、この物語の交通事故シーンを書いた後にその事故が起こったという噂もあり。なので、『回想のビュイック8』 は曰くつき、呪われている、と言われたりもする。確かに呪われているのかも。この本の何だか異様な感じはそういう風に説明ができるかもしれない。
▼ネタバレを開く
いやはや困った。
ホントにこの本、わからないんだよね。
異世界へのドアの役割を持つ車…。
だけども、そこからどこかへいけるわけじゃなくて、変な気持ち悪い生き物がびゃしゃびゃしゃ出てくるだけという…。
そのおかしな生物が 『ダーク・タワー』 の世界からやってきたのであろうことはわかるし、この車を持ち込んだおかしな奴も、『ダーク・タワー』や『アトランティスのこころ』にも出てくるロウ・メンの一種だろうとわかるが…。
それにしてもオチがなさすぎる。
オチナイ話は割りと好きだが、ここまでないと困惑する。
そういえば、『アトランティスのこころ』 でロウ・メンたちがものすごく不快な車に乗ってたね。
あれと親戚かな…。
この物語で好きなところは、ビュイックは車のようで車ではない…という設定だ。
ビュイックみたいに見えるからみんなビュイックって呼んでるけど、車としては使えないのだ。
エンジンみたいのがついてるけど繋がってないし、本物とそっくりに計器などもついてるけど本来の働きは全くしない様子。
そう、こいつはビュイックの形をしたなんか別のもんなんだ。
この設定はとっても面白いからもっと膨らむかと思ったけども。。またどっかで出てくるかな。
◇関連作品
スティーヴン・キング 著
なんか似たようなのが出てくる。
初めて彼女にキスした少年のあの夏、それ以上のキスが二度と訪れはしないことを、ぼくは知らなかった…。1960年、11歳のボビーとキャロル、サリー・ジョンは仲良し3人組だった。だが、ひなびた街に不思議な老人が現れてから、彼らの道はすれ違い始める。少年と少女を、母を、街を、悪意が覆っていく―切ない記憶へと変わってしまう少年の夏を描いた、すべての予兆をはらむ美しき開幕。
◇情報
2002.USA/From a Buick 8