ダーク・タワー
スティーヴン・キング 著
黒衣の男は飄然と荒野の彼方に逃げ去り、ガンスリンガーはその後を追った。
なにもかもが奇妙に歪んだ地、この世ならぬ異境で“黒衣の男”を追い続ける孤高の男がいた。
最後の“ガンスリンガー”、拳銃使いのローランド。
彼はひとりの少年と出会い、ともに旅を続けるが―。
“黒衣の男”とは何者なのか?ローランドの過去とは?
そして、“暗黒の塔”とは…?幾多の謎を秘めた壮大な探求の旅、ダーク・ファンタジーの金字塔が、いま開幕する。
Category:スティーヴン・キング/映画・ドラマの原作/Netflixで見た作品
◇感想と解説
『ダーク・タワー』は、大学生だったキングが、ロバート・ブラウニングの詩『童子ローランド、暗黒の塔に至る(Childe Roland to the Dark Tower Came)』を読んで着想を得た物語で、完成させるまでに30年以上かかった超大作である。まさにキングのライフワークと言ってよい。
※『童子ローランド、暗黒の塔に至る』は長い詩で日本語訳もネット上には存在しないので、気になる人は各自調べてね^^;
キングが時間をかけてじりじりと書いていた物語は、日本で当初、角川書店から出版されていた。
だが、ここで一旦発表が止まったので、日本での出版も中断された。
その後、アメリカで続巻が出ると、日本では新潮社から改めて1巻から出版され完結した。
さらに、完結後、再び角川書店から全巻出版されることになった。
私は新潮社版を読んでいるので、ここでは新潮社版を主に紹介したい。
アブストを読んでもよくわからないと思うので、『ダーク・タワー』の概要を簡単に説明すると、最後の銃使い(ガンスリンガー)ローランドが、宿敵“黒衣の男”を追う中で、仲間を見つけて旅をする物語である。
ローランドのもう一つの目的は≪暗黒の塔≫へと至ることである。彼の生きる世界は荒れ果てていて、その原因は、この世に存在するすべての世界の中心のそびえたつ≪暗黒の塔≫が崩壊の危機にあるためで、“黒衣の男”もそれに関わっている。
ローランドが仲間を見つける手段も面白いし、≪暗黒の塔≫を取り巻くシステムも独特の宇宙観ですばらしい。
ローランドが仲間に引き入れた人物は、いずれも一癖二癖ある者たちで、旅の経験で彼らが強く成長してく様子や、一匹狼だったローランドが徐々に心を開いていく人間模様も面白い。
道すがら出会う風変わりな町や物、人々が、いくら読んでも飽きさせないストーリーに花を添える。
想像をはるかに上回る奇想天外な世界がこの物語には広がっている!!!!
彼らの世界では揺るぎない運命のようなものを<カ>と言い、<カ>によって強く結びついた仲間を<カ・テット>と呼ぶ。
この物語が一種のバイブルであるならば、私は完全にダーク・タワー教の信者だ。
私は生きているうちにこの物語と出会い、そして最後まで読めたことを幸せに思う。
『ダーク・タワー』を読み終え私は思った。
私はいままで何を知ってたんだ?
何もだ。
キングのいくつかの本を読んだことがある人は、『ダーク・タワー』を読まなくちゃいけない。
読むべきである。
『ダーク・タワー』を通らずにキングの他の作品を読んだところで、その世界の数パーセントしか知らないことになる。
これほどに壮大で奥の深い物語が他にあるだろうか…!!!!
(個人の感想だけどw)
風呂敷広げすぎじゃないのか??伏線はりまくりじゃないのか??
ちゃんと回収できるのか???
そんな読者の心配をよそに『ダーク・タワー』の物語はあっちこっち飛び散って、キングの数々の作品へと影響を及ぼし進んでいく。
私はこの宇宙観に心底惚れてしまった!!!!
ああ、この長い長い旅路。
どうかみんなもたどり着いてほしい。
心と身体を震わせる、あの恐ろしい結末へと…!!!!!
◇映画化
『ダーク・タワー』はその壮大すぎる世界観のためか、なかなか映像化されない作品だったのだが、2017年についに映画化された。
それはこの壮大な物語のほんの冒頭のみを語っただけの映画になっていて、エディもスーザンも出てこない。
それでも私は動いているジェイク・チェンバーズを見れただけでも満足だった。
(ローランドは私の中では完全にクリント・イーストウッドなので他の誰が演じても「違う…」となってしまうので残念…)
映画を観て、掴みどころがない話だなーと思った人は、ぜひ知ってほしい。
その背後にあるこの壮大な世界を…!!!!!!
◇余談
物語の中で、ZZ Topの『Velcro Fly』が象徴的に使われるシーンがある。
残念ながら映画には出てこない。
◇繋がりあう作品たち
キングの作品は繋がりあっている。
そのほとんどの中心にこの『ダーク・タワー』がある、と言っても過言ではない。
このページの「ネタバレ」では、『ダーク・タワー』に限らず、キング作品どおしの繋がりを、記憶する限りでまとめたいと思う。
(『ダーク・タワー』以外の作品の核心に触れる場合もあり)
(勘違いもあるかもごめん。)
▼ネタバレを開く
『ダーク・タワー』にかぎらず、スティーヴン・キング作品全体の繋がりについて、私が記憶してるかぎりのまとめ。
【★注意★】各作品の核心に触れることもあります。
■『ダーク・タワー』と関係のある作品
- 『呪われた町』
『ダーク・タワー』の終盤に『呪われた町』の登場人物キャラハン神父が出てくる。
レビューを読む≫ - 『IT』
『IT』の後半で出てくる謎の<亀>は、『ダーク・タワー』における、世界の中心にそびえる暗黒の塔を支えるビームの守護者のうちの最高格。『ダーク・タワー』の終盤で<IT>に酷似した奴が出てくる。
レビューを読む≫ - 『タリスマン』
『タリスマン』の主人公ジャックが飛ぶ異世界は『ダーク・タワー』の≪中間世界≫。
レビューを読む≫ - 『ドラゴンの眼』
『ダーク・タワー』と同じ≪中間世界≫が舞台の物語。『ドラゴンの眼』に登場する邪悪な魔術師フラッグは『ダーク・タワー』や『ザ・スタンド』などにも登場するキング作品最大の悪役。『ドラゴンの眼』の登場人物や、舞台である≪デレイン王国≫について『ダーク・タワー』の中で言及がある。
レビューを読む≫ - 『ザ・スタンド』
悪の権化ランドル・フラッグは『ダーク・タワー』や『ドラゴンの眼』などにも登場するキング作品最大の悪役。『ダーク・タワー』の中盤で、『ザ・スタンド』の超強力ウイルスによって壊滅したアメリカが登場する。
レビューを読む≫ - 『不眠症』
『不眠症』は、『ダーク・タワー』の終盤の登場人物 聖なる絵描 パトリック・ダンヴィルを救う物語である。『ダーク・タワー』で、最も重要な本として『不眠症』が出てくる。
レビューを読む≫ - 『アトランティスのこころ』
『アトランティスのこころ』の最初のエピソード『1960年 黄色いコートの下衆男たち』でボビーが出会う不思議な老人テッド・ブローティガンは、『ダーク・タワー』の最強ブレイカーであり、これはテッド・ブローティガンが逃亡中に何をしていたかという物語である。同エピソードに出てくる不気味なロウ・メンは『ダーク・タワー』にも出てくる。
レビューを読む≫ - 『ブラック・ハウス』
『ブラック・ハウス』では『ダーク・タワー』のラスボス クリムゾン・キング一味が暗黒の塔のビームを破壊するブレイカーの卵たちを誘拐する事件が描かれる。
レビューを読む≫
■≪キャッスルロック≫が舞台の作品
キング作品ではおなじみの町≪キャッスルロック≫を舞台にした一連の作品共通の登場人物などあり。
■≪デリー≫が舞台の作品
キング作品に出てくる≪デリー≫を舞台にした一連の作品共通の登場人物などあり。
■≪ダークスコア湖≫が舞台の作品
キング作品に出てくる≪ダークスコア湖≫を舞台にした一連の作品共通の登場人物などあり。
■中編集『恐怖の四季』と他作品の繋がり
『刑務所のリタ・ヘイワース』『ゴールデンボーイ』『スタンド・バイ・ミー』『マンハッタンの奇譚クラブ』の四編からなる『恐怖の四季』には、作品どおしの繋がりがいろいろある。
- キング作品のいたるところで、『刑務所のリタ・ヘイワース(ショーシャンクの空に)』の舞台である≪ショーシャンク州刑務所≫についての言及あり。
- 『刑務所のリタ・ヘイワース』の主人公アンディー・デュフレーンはショーシャンクに入る前に、『ゴールデンボーイ』のクルト・ドゥサンダーの株取引の担当をしている。
- 『刑務所のリタ・ヘイワース』の主人公アンディー・デュフレーンの妻を殺した真犯人は『スタンド・バイ・ミー』の主人公の親友クリス・チェンパーズも殺害している。
- 『スタンド・バイ・ミー』の4人組が辿っていった線路の先はキングの他作品『IT』の舞台である≪デリー≫につながっている。
- 『スタンド・バイ・ミー』の4人を追いかけまわす不良エース・メリルは、後に強盗をしてショーシャンクに服役する。
■『タリスマン』と『ブラック・ハウス』と他作品の関係
『ブラック・ハウス』は『タリスマン』の続編。『タリスマン』は、主人公ジャックの子供時代の冒険を、『ブラック・ハウス』は青年となったジャックの活躍を描く。『タリスマン』の主人公ジャックが飛ぶ異世界は『ダーク・タワー』の≪中間世界≫。『ブラック・ハウス』では『ダーク・タワー』のラスボス クリムゾン・キング一味が暗黒の塔のビームを破壊するブレイカーの卵たちを誘拐する事件が描かれる。
『タリスマン』のレビューを読む≫
『ブラック・ハウス』のレビューを読む≫
■『シャイニング』と『ミザリー』の関係
『シャイニング』の舞台となるホテルの麓の町≪サイドワインダー≫は『ミザリー』の舞台でもある。
『シャイニング』のレビューを読む≫
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■『トミーノッカーズ』と他作品との関係
『トミーノッカーズ』の舞台≪ヘイブン≫はキングの他作品『IT』の舞台≪デリー≫の近所。<IT>みたいな奴の話が出てくる。キングの他作品『タリスマン』『ブラック・ハウス』のジャックがちらっと出てくる。
■『ダーク・ハーフ』と他作品との関係
『ダーク・ハーフ』の主人公サド・ボーモントの自宅がある≪ラドロウ≫は『ペット・セマタリー』の舞台でもある。『ダーク・ハーフ』の登場人物アラン・パングボーン保安官は、キングの他作品『ニードフル・シングス』の主人公。『骨の袋』で『ダーク・ハーフ』の主人公サド・ボーモントは自殺したと語られる。
■『ニードフル・シングス』と他作品との関係
『ニードフル・シングス』の主人公アラン・パングボーン保安官は、キングの他作品『ダーク・ハーフ』にも登場する。『ニードフル・シングス』では、キングの他作品『スタンド・バイ・ミー』の不良エースが帰って来る。『ニードフル・シングス』のキーパーソン ゴーントさんが次の標的とする街へ到着すると、キングの他作品『図書館警察』の登場人物サムとナオミがいる。キングの他作品『サン・ドッグ』は『ニードフル・シングス』開始直前の物語。
■『ドロレス・クレイボーン』と『ジェラルドのゲーム』と他作品の関係
『ドロレス・クレイボーン』と『ジェラルドのゲーム』は、いずれも1963年7月20日のアメリカ北部で見られた皆既日食が関わる物語である。『ドロレス・クレイボーン』の主人公ドロレスは『ジェラルドのゲーム』の主人公ジェシーと精神的に接触する。『ジェラルドのゲーム』には、『ニードフル・シングス』で保安官助手だったリッジウィックが保安官になり登場。
『ドロレス・クレイボーン』のレビューを読む≫
『ジェラルドのゲーム』のレビューを読む≫
■『不眠症』と他作品の関係
『不眠症』にはキングの他作品『IT』の登場人物マイク・ハンロンが登場する。『不眠症』は、キングの他作品『ダーク・タワー』の終盤の登場人物 聖なる絵描 パトリック・ダンヴィルを救う物語である。『ダーク・タワー』で、最も重要な本として『不眠症』が出てくる。
■『ローズ・マダー』と他作品の関係
『ローズ・マダー』の主人公ローズが駆け込む≪娘達&姉妹達≫には、キングの他作品『不眠症』に登場する活動家スーザン・デイの写真が飾られている。『ローズ・マダー』に出てくる≪娘達&姉妹達≫の人たちはキングの他作品『ミザリー』の主人公ポール・シェルダンが書くロマンス小説が大好き。『ローズ・マダー』の主人公ローズが買った絵の世界は、キングの他作品『ダーク・タワー』に出てくる≪中間世界≫。『ローズ・マダー』の登場人物シンシア・スミスは、キングの他作品『デスペレーション』と『レギュレイターズ』にも登場する。
■『デスペレーション』と『レギュレイターズ』と他作品の関係
『デスペレーション』と『レギュレイターズ』は対になった物語。
『デスペレーション』と『レギュレイターズ』には、『ローズ・マダー』の登場人物シンシア・スミスが登場する。『デスペレーション』に出てくる邪悪な存在<タック>は『ダーク・タワー』の世界からやってきたもの。
『デスペレーション』のレビューを読む≫
『レギュレイターズ』のレビューを読む≫
■『骨の袋』と他作品の関係
主人公マイク・ヌーナンの妻は、キングの他作品『IT』の主人公ビル・デンブロウの本を読んでいる。『骨の袋』の中で、キングの他作品『ダーク・ハーフ』の登場人物サドが自殺したと話が出てくる。『骨の袋』では、キングの他作品『ニードフル・シングス』で保安官助手だったリッジウィックが保安官になり、同作の主人公だった先輩のアラン・パングボーンのその後を語る。
■『ドリームキャッチャー』と他作品の関係
『ドリームキャッチャー』では、キングの他作品『IT』の登場人物たちが建てた石碑が登場する。
■『回想のビュイック8』
『回想のビュイック8』で気味の悪い車を運んでくるのは、キングの他作品『ダーク・タワー』や『アトランティスのこころ』にも出てくるロウ・メンの一種と思われる。ビュイックからビシャビシャ出てくる気持ち悪い生き物は『ダーク・タワー』の世界≪荒地≫からやってくるらしい。
■『11/22/63』と他作品の関係
『11/22/63』の主人公ジェイクが1958年の≪デリー≫(キングの他作品の舞台)を訪れ、『IT』のリッチー・トージアとベヴァリー・マーシュと出会う。
◇情報
1982.USA/The Dark Tower: The Gunslinger
1987.USA/The Dark Tower II: The Drawing of the Three
1991.USA/The Dark Tower III: The Waste Lands
1997.USA/The Dark Tower IV: Wizard and Glass
2003.USA/The Dark Tower V: Wolves of the Calla
2004.USA/The Dark Tower VI: Song of Susannah
2004.USA/The Dark Tower VII: The Dark Tower
2012.USA/The Dark Tower: The Wind Through the Keyhole