1993.03.114本のロウソク
母が4本のロウソクに火をつけている。
前にもこんな事があった気がする。
4本のロウソクの端の2本が消えたら死ななくてはならないことを、私は知っている。
母がそのロウソクに火をつけている。
山の上に巨大なロウソクが4本置かれている。
人がたくさんいる。
私たちは、赤い砂の砂漠にいてロウソクを見守っている。
ロウソクが消えたら死ななくてはならない人はもう決まっていて、じっと並んで立っている。
私も死ぬ側の中に入っている。
これから死んでゆく私たちを、さらに大勢の人が取り囲んでいる。
ゴウゴウと風がふく中、私は死ぬ人数を数える。
60人。60人いる。
私たちはじっとロウソクを見ている。
隣に友人がいる。
彼女は赤い手袋をして、いつもの調子で話しかけてくる。
そうしているうちに、ロウソクの火が消えてしまった。
自分が死んでゆくのが判る。
それは、眠りに引き込まれる時のあの感覚でひどく心地よい。
と、私はこの夢の話を教室でみんなに話している。
隣には夢で会った友人もいる。
彼女は赤い手袋をして、赤いマフラーもしている。
話をしているうちに、みんなが同じ夢を見たことが判る。
担任の先生が入ってきて、言う。
「昨日、死んだのは何人だ?」
「16人」
「6人だよ」
「60人だよ」