クシュラと絵本の奇跡
テレビで見て感動で号泣してしまった。
クシュラという女性についての物語。
私はどうもアートと生命力が直結した話に弱い。
クシュラは1971年ニュージーランドに生まれた。
生まれつき障害があって染色体異常と診断された。
染色体に異常があると、さまざまな症状を伴う。
視聴覚・内臓・形態・知能・運動など、重度の障害だ。
彼女と同じ障害を持つ者は、生後1年以内に90%が死亡すると言われる。
それでもクシュラの両親は希望を捨てずに娘を育てた。
クシュラの両親は、何の反応も示さないわが子を抱いて抱いて語りかけた。
そして大量の絵本を読み聞かせた。
母親のパトリシアはクシュラが起きている間中 彼女を抱いて本を読んだ。
クシュラは本が好きみたいだった。
絵を見て興味を示すようになった。
娘とのコミュニケーションの手段として、両親は絵本を読んで読んで読みまくった。
3歳までに彼女が読んだ本はなんと140冊。
繰り返し繰り返し、本によっては100回以上、クシュラがフレーズをまる暗記するほど読んだ。
クシュラは物語に夢中になった。
めくるめく絵本の世界と語られる言葉の洪水、そして絶え間ない両親とのスキンシップ。
これらは障害を乗り越えてクシュラの脳を刺激し、彼女の心を外へ外へと向かわせた。
そして奇跡が起こる。
1歳まで育つのも難しいと言われる中でクシュラは生き続け、3歳になるころには、豊かな感情と言葉を取得し、文字に興味を持ち、走り回ることもできるようになった。
人間が人間として生きていくために、愛と空想の刺激がどれほど大きなものかが証明された出来事かと思う。
もちろん、クシュラと違って残念ながら長く生きることができなかった子供たちに愛が足りなかったわけではない。
クシュラに起きたことは奇跡なのだ。
なぜ人は、食物摂取や睡眠や排泄と同じように愛とアートを必要とするのか。
その答えがここにある気がする。
クシュラのおばあちゃんが彼女のことを綴った本があるんだけど、その表紙の写真が全てを物語っている。
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クシュラが読んでいた本は…
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私も大好きな本である。どれもこれも。
もちろん、クシュラはここで紹介しきれないほどたくさんの本を読んでいるわけだから、私の好きな本とかぶるのは不思議でも何でもないけど、けど、でも、これらを彼女も読んでいたんだって思うと涙が止まらなくなった。
本を読んでもらったときのワクワクドキドキする感覚。
窒息しそうになるくらい好奇心で体中がいっぱいになったあの感覚。
あの夢いっぱいの時間は、私の人生にも大きな影響を及ぼしている。
数々の愛すべき物語がなかったら今の私はないと思う。
クシュラのドキュメンタリーを通してそれが改めてわかった。
イマジネーション。
想像。空想。妄想。
これらが人生を輝かせるスパイスとなる。
クシュラは一般の子供と一緒に学校に通い、そして成人した。
クシュラが成人すると、母パトリシアは驚くべき提案をする。
クシュラに自立してみてはどうかと持ちかけたのだ。
これは、両親がいなくなっても、彼女が生きていけるようにと将来を考えてとのことだった。
彼女は自分の運命がわかっていたんじゃないだろうか。
クシュラは両親の元を離れて共同住居で暮らすことになった。
巣立つわが子に母は言った。
「ずっと勉強を続けなさい。」
その数年後、母パトリシアは、40歳の若さでこの世を去った。
まさに命をかけてクシュラを育てたのだ。
テレビでは、39歳になったクシュラを訪問していた。
現在、3人で共同生活をしているそうだ。
クシュラは、天使のような素敵な女性だった。
笑顔が本の表紙のころと全く変わっていなかった。
彼女は目をキラキラさせてある本を紹介していた。
「Our Story」 というタイトルだったと思うんだけど見つけられない。
「この本が大好き、まるで私のことを書いているみたい。」
と言っていた。
少女のような微笑みだった。
本は何度も読んでいるらしく、角がぼろぼろだった。
スタッフの人が、お母さんが亡くなった時はどう思いましたか?
と質問したら、
「お母さんはある日突然、亡くなってしまったの。
私は悲しくて悲しくて、お母さんがどれほど大切だったか知った。
彼女は私の全てだったの。」
と語った。
クシュラは同じ障害を持つ者の中で、おそらく最年長。
母親の言いつけを守って、今でも勉強を続けている。
クロスワードパズルを毎日。
解くのがとても早いそうだ。
(↓2017年追加)
私の息子は通常2つであるはずの21番目の染色体が3つある『ダウン症』として生まれてきた。
シュクラの本の話を聞いて猛烈に感動したのを覚えている。
まだ息子は0才だけど、毎日毎日絵本を読んであげているよ。