キムの出した答え
最近、えらく感動したことがあった。
それは、「ワン・ツー・スリー」ってやるあのTV番組で見たこと。
脳科学者 茂木健一郎先生のプレゼンで、サヴァン症候群のことをやっていた。
サヴァン症候群とは、知的障害や自閉性障害がある人の中で、ある特定の分野において尋常ではない能力を発揮する症状のこと。
たとえば、曲を1回聞いただけでそのとおりピアノを弾いてしまうとか、桁の多い計算を瞬時にやってしまうとか、一瞬見ただけで細部まで本物そっくりの絵を描いてしまうとか。
このように、サヴァン症候群と言われる能力はさまざまなものがある。
裸の大将で有名な山下清も、旅から帰ってきてから記憶を頼りに絵を制作していたとのことでサヴァンだったのではないかと今では言われている。
サヴァンには、学者もいれば芸術家もいる。
中でも芸術家タイプのサヴァンが作り上げる世界は人の心を打つ何か特別な力を持っているのだ。
◇スティーヴン・ウィルシャーの胸をうつ風景
番組でも紹介していたスティーヴン・ウィルシャーという人の絵をみてほしい。
彼は、一度見た建物や街並みを記憶し、それを紙の上に細かく描くことができる画家。
風景を見ながら描くのではなく、記憶をもとに描く。
スティーヴン・ウィルシャーのHP
http://www.stephenwiltshire.co.uk/
こちらのコーナーで絵を見ることができる。
http://www.stephenwiltshire.co.uk/gallery.aspx
機械のように正確なのに、すごくあったかい。なんなんだこれは。ずっと見てられる絵だ。
なんだか子供ころから大好きだった安野光雅の 「旅の絵本」 に共通する魅力があるんだよね。
◇レスリー・レムケ 母にささげた奇跡の演奏
そして、こちらも紹介したい愛のサヴァン。
レスリーは脳に障害を持って産まれ、幼いうちに両眼を病気で失った。
そんな彼を実の両親は捨ててしまい、メイ・レムケという人に育てられることになった。
このメイがすばらしい人で、深い愛情とともにレスリーを育て、やがてその才能に気がついた。
そう、レスリーは一度聞いた音楽をすぐピアノで弾いてしまうという驚愕の能力を持ったサヴァンだったのだ。
↑これは英語だけど、どのようにして彼の才能を知ったのかを語るメイ。
テレビでやっていた曲を、誰も教えてないのに夜中にレスリーが弾いていたそうな。
こうして、レスリーとメイの各地をコンサートでまわる日々が始まった。
で、こっからがすごい泣ける話なんだけど、
月日は流れ、やがてメイの脳はアルツハイマーに侵され始める。
病気は進行して、彼女は自分が何者なのかもわからなくなり、感情もなくなり、誰よりも愛した息子のレスリーもわからなってしまった。
無表情でじっと座るだけの母。
ある日、レスリーは自分の母にささげるために二人で歌った思い出の曲を弾きだした。
素晴らしい演奏と歌を披露する息子。息子の横でじっと耳を傾ける母。その顔は無表情。
やっぱり大好きな曲もわからなくなちゃったんだなーと思った矢先。
曲がサビにさしかかると、メイが両手を天に掲げて歓喜の表情をした!!!!
そして力のかぎり歌いだすメイ。
その少女のような純粋で嬉しそうな顔!!!!!
その顔!!!! 喜びがほとばしる、その顔!!!
私の胸はいっぱいになってあふれる涙を止めることができなかった。
残念ながらこの映像はネット上で見つけることができなかったけど、みんなにもみせたいなぁ。
どっかにないかな。。
茂木氏が言うには、幸福と結びついた記憶は思い出しやすくできているそうだ。
辛い記憶はいつまでも残りそうだけど、実は忘れちゃうものなんだね。
幸福と結びついた音楽はアルツハイマーを撃退して一瞬かもしれないけど、本当のメイが戻ってこれたんだ。
わたしもいまのうちに幸福と音楽を結びつけておきたいと思う。
そしたらボケても思い出せるかも。
よい話だわ。
◇キング オブ サヴァンの出した答え
さて、ここでやっと、本日わたしが一番紹介したかったサヴァンを登場させよう。
その名はキム・ピーク。キング オブ サヴァン と言われる人。
映画 『レインマン』 のモデルにもなった。
九千冊の本を暗記する男 ― サヴァン症候群とは
http://x51.org/x/05/12/1952.php
キムは、お父さんの助けなしでは生活できないくらいの重度な障害をもっている。
お父さん、半端ないわ。キムもすごいけどお父さんもすごい。
靴下も一人ではけないようなキムだけど、でも彼は 9,000冊もの本を暗記している。
ノンフィクション、フィクションに限らず、あらゆる種類の本を。
一番好きなのは電話帳だそうだ。
どんどん内容がかわるからだろうか。
でも彼の能力は、これだけじゃない。
彼の場合、今まで紹介したサヴァンのように、あるひとつのことに対して神的能力を持っているのではなくて、ぜんぶ、すごいのだ。
彼は全てを知っている。
たとえば、茂木さんが自分の誕生日を告げると、生まれた日が何曜日か即座に教える。
ついでに今年の誕生日の曜日と定年するときの曜日も。
茂木氏は、計算で出している答えとは思えない、と言っていた。
なぜななら早すぎるから!!!!!
カレンダーが目の前に見えてるとしか思えないというのが茂木先生の感想だった。
まさに神のような人。
そんな人類の全てと、それ以上のことを知っているキムが出した答えがある。
番組の中で、彼はそれを教えてくれた。
それは人類の歩むべき方向を示していると言っても過言ではないほどすごい言葉だったので、ぜひとも紹介したいと思う。
その言葉がこれだ。
他の人との違いを認めてそれを尊重しよう。
自分がして欲しいと思う事を人にもしてあげよう。
そうすれば この世はもっと良くなるから。
残念ながら動画は消されてしまった。
残してほしかったな・・・。
キムが言ったことは、すごく明確で単純なこと。
つまり、All you need is LOVE. 愛こそすべてなのだ。
このキムの言葉を重たく受け止めたいと思う。
そしてみんなに伝えたい。
(2010/2/25追記)
2009年12月19日キム・ピーク氏が永眠した。