パングラムのお話
パングラムとは、アルファベット や ひらがな など、その言語の全ての文字を使って意味のある文章になっているもの。
たとえば、英語だと。
すばしっこい茶色の狐はのろまな犬を飛び越える
これよくフォントの見本になっている。
でもしかし 「o」 とか複数回出てくる文字がある。パングラムは、全部のアルファベットを使うってことなので、同じ文字が複数回出てくるのはよしとされている。
だけど、短ければ短いほどよくて、全ての文字を1回ずつしか使わない場合は、完全パングラムと呼ばれ評価される。
英語で完全パングラムを作るのはとても難しいらしく、略語やイニシャルなどを使っている場合もある。
その中で、略語もイニシャルも使ってないものがあった。
圏谷 フィヨルドのバカは何問目かの聖体容器の問題を妨害する。
翻訳がないので自分で解釈してみたが… なんのこっちゃ。。。。
まあ、でもこのナンセンス具合はパングラムの特長で楽しいところなんだろうな。
文字を全部使って意味のある文章にするなんて、簡単そうで、実はやってみてもできないぞ。
だから、パングラムでなおかつ意味が深いものを作るには相当な頭脳が必要なのだ。
なんか深い意味のパングラムないかなぁと探っていたら、日本のパングラムにたどり着いた。
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
これは、言わずと知れた 「いろは歌」。ひらがなを1回ずつ使っている完全パングラム。(「ん」 は含まず。)
だから昔は 「あいうえお」 の変わりにこれを使っていた。
今ではすっかり使わないけど、「いろはにほへと」 の1行くらいはみんな知ってるよね。
え? これ文章になってないじゃん、って? いえいえいえ、実はこれはこんな歌だった。
色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず
大意:
花の色は香れどいずれは散ってしまう。この世で誰が永遠であろうか。
無常のこの世を今日は越えて。浅い夢など見まい。酔いもしない。
深い…!!! 深すぎる…!!!!
いろは歌には謎が多く、作者もわからなければ、詠まれた時期も正確にわからない。
誰がいつ何故作ったかわからない。だけど21世紀になっても多くの日本人が知っているフレーズ。
何なんだっ!この歌!!!!!!
謎だらけではあるものの、相当古いものであることには間違いなく、平安時代ごろまではさかのぼる。
こんなよくわからない歌ではあるが、これがパングラムを成立させるだけに作られたナンセンスな文章とは全く異質のもので、何かぞっとするような魅力を秘めているのは確かだ。
この尋常ではないオーラにはわけがあって、なんと、この 『いろは歌』 には仏教の基本的理念が詠みこまれてるのだ。
→この世の現実存在は流動変化する
→色は匂へど散りぬるを
是生滅法
→生命のあるものはいつかは滅びて死に至る
→我が世誰ぞ常ならむ
生滅滅已
→生死を超えて涅槃に入る
→有為の奥山今日越えて
寂滅為楽
→涅槃至って初めて真の安楽を得る
→浅き夢見じ酔ひもせず
なにこれ。ハンパない。
表現の幅が究極に限られた状況でこの内容…。
神業だわこりゃ。
こんな超人的な歌を詠めるのは、あの人しかいないのでは!?
ということで、いろは歌の作者は真言宗の開祖 空海なのではないかとの説もあるが定かではない。
意味のないただの呪文みたいなもんだと思っていた 「イロハ」 にこんな意味があったんだって、初めて知ったときには全身がふるえた記憶。それは高校生の時の国語の授業だったと思う。
それにしても、なぜ、「イロハ」 は知っていたのに、私はこれが歌だって知らなかったのだろうか。
その訳はたぶん、『いろは歌』 の不思議な書き方によるものと思われる。
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
なぜか 『いろは歌』 は意味の区切りではなく、7文字で区切って書かれる。
昔からそうなのだ。
なぜなのか。これじゃあ、意味がさっぱりわからず、覚えにくい。
それは、こうやって書いたときにだけ成立する暗号があるから、とういう説がある。
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
『いろは歌』 を7文字で区切って一番最後の文字を拾うと何が見えるか。
「咎」とは、「お咎め」。罪のことだ。
罪なくて死す
なんだかサスペンスの香りがしてきたよ。『いろは歌』 が誰かの無罪を主張するための暗号だったとしたら???
こうして考えると、『いろは歌』 の作者不明になってしまった理由も、どんなときに書いたものなのかわからなくなってしまった理由がなんとなく見えてきたり。
誰かが無実の罪で殺された。
その人物の無実を信じる人はどうにか真実を後世に残したいがあまりに危険である。
だからその事実は暗号に託されて歌となり、口から口へと伝わっていった。
が、その秘密があまりに厳重に隠されたために、時とともに真の意味が失われしまった。
あとには歌だけが残った。
忘れられてしまった歴史は二度と取り戻すことはできない。
天地がひっくり返るような大発見でもない限り、私たちはこの不思議な歌が生まれた理由をあれこれ想像するしかない。
もっと奥まで探求したい人にはこの本がおすすめ!!!
ぜひぜひ読んでみて!!!