タリスマン
スティーヴン・キング / ピーター・ストラウブ 著
西へ!西へ!母を救うための旅
ジャック・ソーヤーは12歳、病身の母と2人、アメリカ東海岸の保養地でひっそり暮している。
母の病気は癌らしい。
ある日、さびれた遊園地で、ジャックは不思議な黒人スピーディに出会った。タリスマンがあれば母は助かる、そう彼は教えてくれた。タリスマンとは一体なんだろう?ジャックは独り試練の旅に出発する―母の生命を救うために。
2人の巨匠が作りあげたファンタジー巨編。
Category:スティーヴン・キング
◇感想と解説
母を救うべく、一人息子の少年が二つの世界を行き来しながら旅をするお話。
どことなく 『指輪物語』 を彷彿とさせる世界。作品中でも何度かJ・R・R・トールキンの作品について言及もある。
この本は、スティーヴン・キングとピーター・ストラウブという二大ホラー巨匠によって書かれたが、内容は美しいファンタジーとなっている。だいぶダークだけど。
二人はパソコン通信を使って、リレー小説の形で物語を書いていったそうだ。今でこそインターネットは当たり前だけど、80年代初頭のこのころでは、パソコン通信なんてマニアックな人しかやってないSF的な代物だったろうね。
トム・ソーヤのような名前をもらった少年 ジャック・ソーヤの冒険は、12歳の少年に課すにはつらすぎないかと思えるほど苦痛な任務だ。
『指輪物語』 っぽい原因のひとつに、主人公の苦悩っぷりもあると思う。いやもう、そこまでしなくても(^^;)ってくらい、大変なんだよ、二つの世界をマタにかけたジャックの旅は。
大人が読んでももちろん楽しめる小説だが、できれば思春期を迎えた若きジャックたち、ジャック子たちに読んでもらいたい作品だ。
それから、『タリスマン』を紹介するにあたって『ダーク・タワー』 との共通点に触れずにおくことはできない。
『ダーク・タワー』 はキングが30年の月日をかけて書き上げた超大作なのだが、『タリスマン』は、その壮大な世界のミニチュア版のような内容になっている。
先に『ダーク・タワー』を読んだ人は、『タリスマン』の各所に見覚えのある風景を見ることになるだろうし、後から『ダーク・タワー』を読む人は、その経緯の中にジャックの冒険を思い出すことがあるだろう。
それから『タリスマン』 には 『ブラック・ハウス』 という続編があるが、1作目とは様子がだぶ変わっている。そちらは完全に 『ダーク・タワー』 と直結した物語になっていて、ホラー色が強くなっている。
続編『ブラック・ハウス』はちょっと青少年にはお勧めできない作品であるけど、、、大人のみなさんは、立派な青年へと成長した ジャック・ソーヤと共に 『ブラック・ハウス』 の世界にもぜひ旅立ってほしい。
▼ネタバレを開く
タリスマンは不思議な力のあるお守りのことを言う。ギリシア語のようなので、ギリシア神話とかに出てくるのかな?
一般的な用語になりすぎて調べきれなかった。ファンタジー系のゲームや小説、マンガなどでこぞってアイテムとして使われている。
タリスマンを求めてジャックが向かった先は、≪黒い館≫ であったが、これが実に ≪暗黒の塔≫ チックである。≪黒い館≫ 内部での表現で、全ての世界に同時に存在するとい表現があるが、全ての世界の中心にあるとされる ≪暗黒の塔≫ とイメージがダブる。
まるで西部劇のように列車にのっていく感じも似ている。
◇関連作品
J・R・R・トールキン 著
『タリスマン』の中でこの本について言及される。
恐ろしい闇の力を秘める黄金の指輪をめぐり、小さいホビット族や魔法使い、妖精族たちの、果てしない冒険と遍歴が始まる。数々の出会いと別れ、愛と裏切り、哀切な死。全てを呑み込み、空前の指輪大戦争へ―。
宮部みゆき 著
『タリスマン』 に影響を受けたと言われる。
おだやかな生活を送っていた男の子に、突然、両親の離婚話がふりかかる。家を出た父を連れ戻し、再び平和な家族に戻りたいと強く願う少年が向かった先は、運命を変えることのできる女神の住む世界「幻界(ヴィジョン)」だった。5つの「宝玉」を手に入れ、女神のいる「運命の塔」を目指す彼を待ち受けるものとは!? トカゲ男にネコ娘、火を噴くドラゴン。コミカルなキャラクター勢とともに、次々と沸き起こるトラブルを乗り越え、少年は強くたくましくなってゆく。
◇情報
1984.USA/The Talisman