ブラック・ハウス
スティーヴン・キング / ピーター・ストラウブ 著
すると大鴉は言った「ネバーモア」と
LA市警の敏腕刑事ジャックは、辞職してウィスコンシン州の田舎町に移り住もうとしていた。折しも町では、食人鬼フィッシャーマンによる少年少女誘拐事件が続発。事件の背後にある不可思議な現象を探るうちに、ジャックは、20年前に母親の命を救うために旅立った異界からの呼び声を聞くことに―。
稀代の語り部コンビが『タリスマン』に次いで贈る畢生のダーク・ファンタジー。
Category:スティーヴン・キング
◇感想と解説
『タリスマン』 の正式な続編となる。前作が児童文学っぽいダークファンタジーだったのに対し、今度はサイコサスペンス調ホラーで、キング色がだいぶ強い作品となっている。
けっこうグロいので注意。
本作品では、ブルックリンの吸血鬼ことアルバート・フィッシュという実在の殺人鬼がモデルの人物が出てきたりして、サイコサスペンスな展開を見せるが、普通のサスペンスではルール違反とされるようなことが起こってしまう。
うわーうそーーん(^^;)って。
だからミステリー感覚で読んでいるとその驚くべきプロットに憤慨して本を叩きつけるようなことになりかねない。
どうか、この本の著者がミステリー作家ではなくて、スティーヴン・キングとピーター・ストラウブという超ド級の2大ホラー作家であることを忘れないでほしいのだ。
前作 『タリスマン』 では J・R・R・トールキンの 『指輪物語』 が度々引用されたが、『ブラック・ハウス』 では エドガー・アラン・ポー の詩 『大鴉』 が出てくる。詩の世界が暗示するように物語はどんどん暗く不吉な方へと突き進んでいき、やがてスケールがでかいことになっていく。(^^;)えーー!? ってならずにちゃんと着いて行ってね。
なお、本作品は決して単体でも楽しめる作品とは言えない作りとなっている。前作を読んでいなければこの特殊な設定を把握するのに苦労するだろうし、何よりも前作では仄めかし程度であったキングの超大作 『ダーク・タワー』 とのつながりが『ブラック・ハウス』 ではモロに出てくる。これは 『タリスマン』 の続編ってゆうより 『ダーク・タワー』 の外伝と言った方がいいくらいな比重である。
本の紹介ではたまに単体でも楽しめるように作られているとか書いてあるけど、私はあえて言おう。
『ブラック・ハウス』 は単体では楽しめない!
『タリスマン』 は読んでおいた方がいいし、『ダーク・タワー』 はせめてその世界設定だけは知っておいた方がいいだろう。
じゃないとね、いろんなことがモヤモヤしちゃうんだ。
▼ネタバレを開く
『ブラック・ハウス』 は、簡単に説明すると、すんごい能力を持った少年が発見されて、ブレイカーとして育てるべくクリムゾン・キング一味が誘拐したのを、イケメンで優秀な男へと成長した元刑事のジャック・ソーヤが救出するという話である。
ブレイカーとは、世界の中心にそびえ立つ ≪暗黒の塔≫ を支える <ビーム> を破壊する能力を持った者たちのことを言う。何を言ってるのかチンプンカンプンな人は、ぜひ 『ダーク・タワー』 を読んでほしい。
『ブラック・ハウス』 では、本編ではあまり詳しく語られないブレイカーについて、どうやって彼らを集めているかなどの裏話を垣間見ることができる。物語の最初では、このような異世界の設定はあまり出てこないし、サスペンス調の雰囲気に騙されてしまい、どうしてもミステリー小説を読んでいるような感覚になってしまう。だもんで、トリックの種明かしの段階でズコっとなってしまいがちである。そりゃあないよ…。と嘆いてもしょうがない。だって、これはトリックを暴く推理小でもなければサスペンスでもないのだから。
◇関連作品
◇情報
2001.USA/Black House