不眠症
スティーヴン・キング 著
老人たちの大冒険
傑作『IT』で破滅から救われた町、デリー。この町にまたも危機が訪れる・・・・・・・。
70歳の老人、ラルフ・ロバーツは、奇怪な不眠症に悩まされていた。睡眠時間は日に日に短くなり、ついには幻覚を見はじめる―人々を襲うオーラ、そして人間の生命を奪ってゆく、白衣に身を包んだ禿げた小人。自分は狂いはじめているのか。ラルフは疑心暗鬼にとらわれ、「チビでハゲの医者」が放つ悪意に怯える日々を過ごす。
一方、町はゆっくりと憎悪と反目に染められつつあった―妊娠中絶を支持する女性活動家の講演が近づき、賛成派・反対派は対立をはじめたのだ。
そう、穏やかな町の人々にはそぐわない激烈な色を帯びて・・・・。
迫りくる人知を超えた邪悪の存在。そいつがもたらす悪意の影を徐々に描きつつ、悠然と、しかしスリリングに幕を開けるキング近年の傑作。
超自然の秘密に触れた老人の勇気が綴る「老人版『IT』」、ついに登場。
Category:スティーヴン・キング
◇感想と解説
本作品は 『IT』 や 『ドリーム・キャッチャー』 でお馴染みの町 ≪デリー≫ が舞台である。
そして、老人となった マイク・ハンロン (『IT』 の登場人物) が活躍する。
最初に書いてしまうが、この物語は、キングのライフワーク 『ダーク・タワー』 あってこその展開となっている。『ダーク・タワー』 の中で、本書が最も重要な本として登場したりするくらいだ。
それらをわかって読むと、この物語がどれほど大切なのかわかる。
そして泣いてしまう。
ああ、そうか、そういうことか…!!!! と。
読者は本の中に答えを求めるだろう。
主人公の老人たちと同じように、なんのためにそれをやるのだろうと考えるだろう。
だけどもこの本の中にはその答えはない。
もちろん単独でも楽しめるようには作ってあるけども、これだけを読んでも真の目的はわからないし、物語の本質は永遠にわからないのだ。
この物語の裏には、巨大で壮大な世界が広がっている。
あえて断言しちゃおう。この本は、『ダーク・タワー』 を読み終わってから読んだほうがゼッタイによい!!
▼ネタバレを開く
『不眠症』 は何なのかというと、聖なる絵描 パトリック・ダンヴィル殺害を阻止する物語である。
ただそれだけなのだ。ポイントは、それを託された老人たち、および、読者にはその全貌が全く知らされずに物語が進むところだ。とにかくこの人物がとっても重要だから助けるんだってそれしかわからない。彼がどれほど重要か、知りたい人はぜひ 『ダーク・タワー』 を読んでほしい。
◇関連作品
スティーヴン・キング 著
『不眠症』 と同じ町 ≪デリー≫ が出てくる。
“クソは変わらず日付が変わる”をモットーに、メイン州の町デリーで育った、ジョーンジー、ヘンリー、ビーヴァー、ピートの4人組。成人した今、それぞれの人生に問題を抱えながらも、毎年晩秋になると山間での鹿撃ちを楽しんでいた。だが、奇妙な遭難者の出現をきっかけに、いやおうもなく人類生殺の鍵を握る羽目に―。
◇情報
1994.USA/Insomnia